さて、先週はアスレチックトレーナー (AT) について少々、ふれてみました。 今週は、私の体験話も交えて、アメリカでのATの位置付けや重要性について書きたいと思います。
私がUSAチームの一員になってから、ナショナルチームのシステムの中で、最も良かったと思ったことのひとつに、練習メニューを組み立てる監督が、ATの意見を大変重要視していたということがありました。
年間の試合日程に基づいて、体力作りや基礎練習期間、オフ期間などを必ず相談して決定していましたし、特に選手が怪我から復帰した場合などは、そのリハビリ方法に関しては、全権限を与えていました。
これはつまり、ATの 「練習して良し」 のゴーサインが出されない限り、どんなに監督が選手を起用したくともできないことを意味しています。
USAチームに入って2度ほど、ギックリ腰になったことがありました。 練習中の怪我といえば確かにそうなのですが、我ながら情けないやら悔しいやら・・・。
いずれの時も2日ぐらいで痛みはおさまり、自分では
100%練習ができると思いATにその旨を伝えたところ、あっけなく却下。
「2日も練習できなかったのだから、今日は軽くパスをしてみて、全方向の動きに痛みがなければ明日、
トスとレシーブ。 それで大丈夫ならば、明後日から
100%OKだ」
と、指示されたのです。
どんな怪我をしても、休養、リハビリ、体をならすだけの練習、そして完全復帰というプロセスが崩れることはありませんでした。
監督とATが、十分な相互理解をした上で協力しあい、作られたプログラムが存在するシステムの中でプレーをすることができたおかげで、肉体に必要以上の負担をかけることなく、またバレーボールを断念せざるをえない怪我もなく、今日まで続けてこられたと確信しています。
私が今まで選手生活を続けてきた間に、プロ・アマを問わず、多くのスポーツ選手が故障と戦い、苦しむ姿を見てきました。 「怪我も実力のうち」 という言葉がありますが、選手自身だけでは防ぎきれないケースも多々あります。 競争相手に勝つためには、それなりに練習が必要ですし、怪我をして休めば誰かが自分のポジションに入ってしまう。 監督も選手も、いつも不安と焦りがあるのです。
これらを打ち消すために、不必要な無理をするところに大きな落とし穴があるのです。 この穴に落ちぬよう、常に冷静に目を光らせているATたちは、米スポーツ界で必要不可欠な存在となっているのです。
(デイリースポーツ'97.9.30)
ヨーコ・ゼッターランドのスポーツ東西見聞録より
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