Atlanta 1996 that night,She has written on the back of her right hand ,in japanise "Make everything possible"
心はボールに込め魂はコートに残して
自己の確立が良きチームプレー生む



「オマエなぁ、こういう言葉を知ってるか? 『実るほどに頭(こうべ)を垂るる稲穂かな』 ってな。 人はエラくなればなるほど謙虚になれってことだ。」 中学2年生の冬のことでした。 
まともに上がったトスが今日は何本あったっけ、なんて言われてしまうほどバレーボールが下手だった私は全日本中学生選抜のメンバーに(幸運にも?)選ばれたことをきっかけに自信がつき、自分でもびっくりするほどトスを上げられるようになりました。 そんな時、東京都の新人戦大会があり、1日目の予選が行われた日の出来事は私にとって生涯忘れることのないものとなりました。

自分たちの試合が始まるまでの時間に少しフリーになったので、体育館の入り口の所で他のチームの試合を見ていた私に、同じくらいの中学生が生徒手帳を拡げて 「サインをしてください」 と言ってきました。 サインなんて頼まれたのは生まれて初めてのことで、とても面食らってしまい、しばし考えて、断る理由もこれといってないからいいのかナ、と思いサインしました。その子がキャーキャーと騒ぐものだから、恥ずかしくてそそくさと体育館から出ていってしまったのですが、その時 「私がこんなコトしちゃってよかったのかしら」 とドキドキもしていました。

案の定、悪い予感というのは当たるもので、後で監督に呼ばれて 「オマエ、さっきサインをしとっただろ?」 「ハイ(私、コウチョク状態)」 「いつからそんなに有名になったんだ?」 「・・・」 というやりとりの後、冒頭に述べたセリフを言い渡されたのです。

自己弁護をするわけではありませんが、得意な気持ちでサインをしたのではなかったので私は少々ショックだったのですが、今思えばやっと良い意味で自信がつき、プレーが伸びてきたところへ、自信がヘンな自惚(うぬぼ)れにすり替わって坂道を転がり落ちたりすることがないようにと先生がぶっとい釘(くぎ)を刺してくださったんですね。 バレーボールの技術面だけにとどまらず、基本的な人間教育に関して若いころに良い師匠に恵まれたことはラッキーだったと思います。

スポーツの世界に身をおいていて時折、怖いなぁと思うことは、ある時は話題づくりに必死なマスコミに、または選手に嫌われることを恐れる指導者によって甘い言葉で 「ほめ殺されてしまう」 選手たちがいることです。 こんなことでつぶされるのならもとから大成する素質がなかったと言われればそれまでですが、現実にこういうことを見ると残念なことだと思います。 
まあ、環境に恵まれない選手には平家物語を読むことをおすすめします。 冒頭部分にありますから。 「おごれる者は久しからず」 ってね。


(デイリースポーツ '99.02.21)
ヨーコ・ゼッターランドのスポーツ東西見聞録より    

心はボールに込め魂はコートに残して
自己の確立が良きチームプレー生む

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